毎日疲労 田舎のJ( 'ー`)し

過疎地域でギリギリライフを送るシングルマザーの田舎暮らしと備忘録

田舎暮らしの経緯1

田舎暮らしと言えば元々そこに住んでいる、あるいはその地域に実家があったり生まれ育った地元であったり、祖父母や本家などの由来があるか。
はたまた都会や街の暮らしよりも自然豊かな田舎暮らしの方が好きだったり、憧れから移住をしてきたか。
だいたいこの二つに分かれるのではないかな?と思っている。


私は大まかに言えば後者に当たる。
両親ともに仕事が忙しく夜もまともに居なかったため祖父母に育てられたようなもので。
祖父母はハイキングや山登りや温泉が大好きで、よくいろいろな所に連れて行ってもらった。
その中でも市街からバスに揺られて二時間ほどをかけてたまに連れてきてもらった所が今現在私が住んでいる所。
小さな時から綺麗な思い出しかない場所が、人生で最も何から何までグチャグチャになっていたときにふと思い浮かんでしまった。


離婚したものの数々の問題でこのまま実家を頼ることもできず、お金も無い安定した職にも就いていなかった私は何を思ったか、振り切れてしまった。
子はいるものの、それ以外は私に捨てるものなど何も無し。
追い詰められると人間何しだすか分からないもので、そこからはもう早かった。


絶対に過疎地域に当たるだろうと踏んで役所のホームページを見ると空き家バンクというものと移住者募集の文字を発見。
よっしゃ移住させてください頼みますと勇み足でホームページを確認したが、空き家バンクに載せられているほとんどは別荘で、値段も700〜1200万円ほどしたのを見たときは気絶しかかった。
もう腎臓売るしかないのではないかと思ったが、一件だけ家賃の文字。
そこそこの古さだがそこそこの大きさがあるように思える間取りだった。
何よりも驚いたのは家賃1万円。
家賃1万円だよ?
古いけど平屋一軒家が1万円、駐車スペース込み。
しかもその地域にたった一つしかない保育園と同じ町内、診療所と学校も徒歩圏内。
目ん玉かっ開いて、すぐに連絡をした。
そして内見を申し込み、十数年ぶりに、今度は観光や山登りではなく住民となるべくための準備としてやって来た。
が、


遠い。


思わず強調してしまうほど遠かった。
今でこそ運転自体にも山道の運転にも慣れたものだが、当時の私はまだサンデードライバーに毛が生えた程度だった。
道も整備が進み、新しい橋が架かったりと十数年ぶりのここは以前よりだいぶん走りやすくはなったと言われたが、それでも街しか走ったことのない私にはとてもキツかった。
あとは私は三半規管がとても弱々なので、自分で運転しても酔う。
大人になったら、自分で運転するようになったら車酔いなんてしないよと言った全員に向かって吐き捨てたい。
この嘘つきどもめ!!


役所の人は二人、毎日この地域までやってくる役所の嘱託職員の人が一人、そしてグロッキー状態の私とピンピンしている子で内見をお願いした家まで到着すると、家の中におばあさんがいた。
パンチパーマのような細かい巻きのパーマをかけた、農作業ルックのおばあさん。
細かいところは違えどとなりのトトロに出てくるカンちゃんのおばあちゃんと同じ服装をしていた。
「窓は開けといたから、テキトーに見てって」と全てを任せて早々に立ち去るおばあさん。
止める間もなく行ってしまったので仕方なく役所の人と内見を続行。
前に住んでいた住人がある程度リフォームをしたのか、所々クロスが張り替えられていたり、地味に一番驚いたのは床だった。畳じゃない。
掘り炬燵、しかも囲炉裏だったのも驚いたけれど。
風呂釜も割と新しめで給湯器とシャワーも付いている。
トイレは汲み取り式なのでそこだけがネックだったが、汲み取り式自体は母の実家や建て替える前の祖父母の家がそうだったので慣れてる。
それに和式ではなく洋式にする……なんだろうあれ、スポッとはめるあの、ポータブルトイレみたいな、アレが付いていたので、子も大丈夫そうだった。


家の外も回ってみた。
カーポートと間取りには書いてあったけどどちらかと言えばカーポート()といった感じで、そこに洗濯機置き場があった。
家の裏手に回ったときに初めてネガティブな面が浮かび、役所の人に訊ねた。
「ここ、崩れません?」
家の裏が小さな崖みたいになっていて、下の方が石垣のようになっている。
流石にこれには不安を覚えたが、役所の人は笑って「大丈夫ですよ」と言い、嘱託の人など鼻で笑って「そんなに心配すること無いよ」と。
だがこれが後に役所への不信と雨が降る度に不安の日々を過ごす羽目になってしまうとは、当時の私はまだ知らなかった。


そんなこんなで内見を無事終えた私は再び車酔いに苦しみながら山を降りた。
心は決まったので本格的な準備をすることにした。